たまたま読んだです

子役になってはみたけれど 青木富夫 読みました
昭和4年 松竹の撮影所に遊びに来ていた少年が大物子役になるです
時代は戦争へ・・・
『「でも、天皇陛下のために戦って戦死すれば、靖国神社に祭られて神様にしてもらえるのでしょう」
「嘘でも、神様にしてもらわないと兵隊が可哀想ですよ。死にたくないからといって、恨みもない人間と殺し合いをして殺されるのですから」
天皇陛下のために戦っていることは、嘘なのですか。神様になることも嘘なのですか」
富夫は思わず抗議する口調になった。
「嘘も方便。お釈迦様がそう言ったでしょう。本当のことは、ときには人を悲しい思いにさせることもあるのですよ。突貫さんの喜劇は、みんなを笑わせて楽しませてくれる。でもお芝居は嘘です。嘘とわかっていても、出来のいい嘘には拍手喝采。そうでしょう」
富夫は頷くと、聞き耳をたてた。
「死にたくないから殺し合いをする。兵隊はそう考えたくないのです。嘘だと知っていても、天皇陛下のためにと・・・」
見習い士官の目のあたりの表情が揺れた。
「本当のことから目を逸らさなければ、兵隊は戦えないのです」
「人を救うのには嘘も必要です。嘘は潤滑油になるのです。突貫さんのお芝居の嘘は、大勢の人を楽しませてくれる。お釈迦様が言う嘘も方便は、不幸な人たちを救ってくれるのです」』