悲惨なのは納税者ということで

実は悲惨な公務員 山本直治 読みました
『ここ近年民間企業では、終身雇用・年功序列制度の終焉にあわせて、成果主義の導入が進んでいるといわれます。しかし、成果主義というのは導入の仕方次第で、すでに高給取りになっている人の収入は下がりにくく、旧来の年功序列制度であれば今後着々と給与が上がっていくはずだった若手ばかりが給与を抑制される制度にもなります。その場合、「勝ち逃げ組」にはほとんどメスが入らないので、世代間格差の拡大を生むだけだと主張する専門家もいます』
『退職金制度というのは一般的に、従業員の定着を促して組織の力を強化することに加え、個々人の退職後の生活保障などの効用があるといわれています。ただ、数字の面だけで見た場合、中途退職すると損になることが多いシステムであり、転職の制約要因になる面は否めません。年功序列・終身雇用制度が崩壊し、転職が当たり前になった時代には合わない制度だといわれるゆえんです。』
天下りの発生原因についてはすでに言い尽くされていますが、一言でいえば、早期退職慣行の受け取り皿ということです。もう少し具体的に説明すれば、お役所に長年勤めていると、中間管理職あたりで全員を処遇するには、ポストが足りなくなります。全員に定年まで勤めてもらうと、先がつかえて人事が硬直化するので、組織の若返りのため毎年何人かに定年より前に退職勧奨(いわゆる肩たたき)によって早期退職してもらう慣行ができました。とはいえ、基本的には整理解雇できない公務員ですから、お役所と同等以上の処遇で外にポストを確保しなければ転出に応じてくれません。この受け皿として天下り先が必要なのです』
天下りに頼らず、積極的な理由で民間に飛び出そうとする公務員は心ある人達です。こういった人達に対して偏見を持ち罵声を浴びせ、民間へのソフトランディングを阻もうとする考えこそ、「北風思考」です。
「俺なんかお役所から民間に移っても通用するわけないよな」
世の中からの公務員への偏見によって、公務員たちがそう思えば思うほど、彼らはお役所内の待遇や天下りにいっそう強くしがみつくことになるのですから』
『長年放置された不祥事が発覚すると、事態の処理やバッシングで大変な目にあうのは、以前にその原因を作り出した張本人よりも、それを引き継いだ現在の担当者のほうである。それゆえ、不祥事の存在を知った現在の担当者は、短期的には隠したほうが自分は楽だし、周囲にも迷惑をかけずに済むという誘惑に駆られる』
『BSEや耐震強度偽装のような、世の中を揺るがす社会問題や事件が起きた時、それに関係する霞ヶ関のお役人が必ず行うことがあります。それは、事態の推移やマスメディア・世論の騒ぎ方、そして国会でのもめ方などを見ながら、お役所としてどこまで対処すれば世の中を納得するか、言い換えれば「事態収拾の落としどころ」を虎視眈々と値踏みすることです』