国家の損失だと思うです

高学歴ワーキングプア 〜フリーター生産工場としての大学院 水月昭道 読みました
『今、大学院博士課程を修了した、いわゆる高学歴とされる層に異変が起こっている。自殺者や行方不明者の増加。そして、フリーターや無職者となる博士が激増しているのだ。私の周囲でも「仕事みつかりましたか?」が、挨拶代わりとなって久しい』
『「世界をリードするような研究を推進するとともに、優れた研究者や高度の専門能力を持った職業人を養成するための拠点として、大学院を充実強化していくことです」これが、大学院生増産計画の「はじまりと目的」である。計画は予定通りに進み、その結果は冒頭に挙げた26万人余りもの大学院在学者数へと繋がっている。さすが官僚、大成功である。だが、ある疑問が頭をもたげてくる。増産によって上積みされた大学院生や卒業生たちは、社会のどこに吸収されていったのか?そもそも社会は、大学院卒をいう人間をどれほど必要としているのか?』
『教員は通常「よい大学」(旧帝大東工大・一橋大・筑波大・神戸大・広島大・早慶等)を出ている場合が多い。その彼らがいわゆる三流大学に勤めることになった場合、学生を見下している場合が多い。彼らにとっては、そんな学生が、自分達と同じ教壇に立つなど、許せないことなのかもしれない』
『伝統的な優秀校を出た者たちは、比較的歴史の浅い地方大学へと教員を送り込み続けることで、そこが植民地化されている』
『若年労働市場がかつてないほど縮小したことをいいことに、就職難であぶれた若者たちをすくい取るようにして大学院生へと仕立て上げ、その果てにかなりの収益をあげている大学も少なく無いはずだ』
『大学院重点化というのは、文部省と東大法学部が知恵を出し合って練りに練った、成長後退期においてなおパイを失うまいと失念を燃やす「既得権維持」のための秘策だったのである』
『大学教員の世界は、一度専任で登用されれば、後は怖いものなしで過ごせる、極めて安定的な職種である。所属する大学法人が解散する、あるいは病気になる、または自らクビになるようなこと(セクハラなど)さえしなければ、定年まで安定した生活が保証されている。おそらく、日本でも最も完全な終身雇用が守られている職種の一つだろう』
『大学教員を目指しポストが空くのを待つ間、なんらの講義を受けることも無いにもかかわらずお金を払い続けるというのが、就職浪人中の博士卒の一般的な境遇なのだ。業績をあげ続けるには、大学に所属していることがどうしても必要となるため(学会発表には所属が必要とされる)彼らは泣く泣くお金を払い続ける。』
『現在、研究者を目指す若者が、34歳で教授になれる見込みは、ほぼない。ただし、東大、それも法学部などストレートで卒業し、大学院の課程中途で博士号を得、20代後半にして准教授に就任するスーパーエリートは存在する。しかし、これは例外中の例外である。Qちゃんがいかに若くして「教授」になってしまったか、お分かりいただけるだろう。大学の専任教員を見渡せば、50代でも教授待ちをしている准教授がザラにいるなかで、大学の外からやってきた民間人が30代前半で、特任とはいえ教授になってしまう現在の状況は、内部にいる人間にとってはたまらないはずだ。』
『専門を、ある程度極めた人間を、それとはまったく関係の無い仕事につけることは、社会全体の不利益にもなると思うのです。なぜなら、そうした専門家を作り上げるために、社会はそれまで大きな投資をしているのですから』