毎週、クリニックの診察室で私は深いため息をついている。

働く女の胸のウチ 香山リカ 読みました
『これから「ワタシ六十歳、でもココロの熱さは三十歳」「私は八十歳にして少女時代からの夢を実現した」と堂々と言える女性達がどんどん増えれば、「実際の年齢を言われると不快になる。だから相手の年はなるべく少なめに言いましょう」といった発想さえなくなるはずだが』
『視野は広いほうがいいが、悩みに関してだけは視野を狭くするほうがいいかもしれない。上司と上手く行かないなら「どうすればスムーズに連絡できるか」と考えればいいだけで、そこから「そういえば子供のことから年上の人と話せないし・・・。そうだ、中学のときにも」などと記憶の糸をたどる必要はない。がんばり屋の卒業生たちにも「悩みはひとつにしときなさいよ」と話すのだが、すんなりわかってもらうのは難しい』
『児童精神医学の専門家の論文で「子供の心は、親の離婚そのものよりも、離婚に至るまでの家庭内の不穏な雰囲気でより大きな傷を受ける」という仮説を読んだことがある。家庭内は円満であるにこしたことはないが、ウソの笑顔を続けるよりは新しい生き方を選択した方がいい、という場合もあるのではないか。そのためにも、ひとりひとりが自立のすべを身につけることがまず必要だ』