シリコンバレーでは一割の人が該当する

アスペルガー症候群 岡田尊司 読みました
『このタイプの人も、相手の顔を見分けたり、視線や表情の意味を理解したりすることは出来るが、それは、内側前頭葉扁桃体を使う本来の働きによるというよりも、その弱点を補うために、あとで身に着けた学習の成果だと考えられる。顔の表情だけでなく、言葉遣いやその他の反応から、相手の気分や内心の状態を推測することを学んだのであろう。しかし、それは自覚的な努力と経験との照合によって行われるものであり、咄嗟の状況にはすぐさま対応しきれない場合も出てくる。』
『一つの遺伝子によって、自閉症が引き起こされるといった単純なものではなく、いくつもの遺伝子が組み合わさることによって障害が起きる多因子遺伝だと考えられている。脆弱X症候群のように、特定の遺伝子異常が関係している場合もあるが、そうした場合は一部であり、多くのケースでは、自閉症を起こす特定の遺伝子というものが存在するわけではなく、言語的能力や共感性、社会的知能、固執性、視覚・空間能力などに関わる複数の遺伝子があって、その組み合わせによって、症状のバラツキや重症度の違いが生まれると考えられる。』
『社会性の乏しさや固執性といった、一見、生存や子孫繁栄に不利な形質が、別の局面では、種の繁栄に役立ってきたからこそ、これらの遺伝的特性が、人類の遺伝子プールに保存されて来たと考えられる。現代にアスペルガー的な人が増えているとすると、それは、アスペルガー的な遺伝子を持った人が子孫を残しやすくなっているということであり、言い換えれば、今日の社会が、アスペルガー的な人が繁栄しやすい環境になっているということかも知れない。』
『短期間で簡単に変わるはずが無い遺伝的要因が、実はバイアスのかかった選択によって、比較的短期間に変化し得るとする仮説が出されている。人為的な交配や人為的な選択を加えれば、こうしたことが短期間に起きることはよく知られている。同じような形質をもつ個体同士が交配することで、遺伝子が集積に、形質が強まるのだ。もちろん人間にそんなことをすることは出来ないが、もし自らが好んで、同じような傾向をもった相手を、パートナーに選んだとしたら、比較的短期的に、遺伝子の集積が起こり得るのではないか。』
アスペルガー症候群の人の両親には、どちらも優秀で、研究職や知的職業に就いているというケースが多い』
?胎児期男性ホルモン仮説と環境ホルモン
?オキシトシンと分娩誘発剤
?ウイルス感染説
?自己免疫説
?ワクチン説
?周産期合併症説
?鉛など重金属説
『ところが今世紀に入って、この「タブー」を一部見直す動きが出ている。遺伝的要因や生物学的要因が大きな割合を占めているのは確かだが、心理社会的な要因、たとえば、十分な関心や世話、適切な社会的な刺激が与えられたかどうかも、まったく無関係とは言えないことを示唆する事実が知られるようになったためである。というのも虐待やネグレクトを受けた子供に、自閉症スペクトラムと診断出来る子供が高率に見出されているのである。』
『本人が矛盾だ、理不尽だと感じる出来事は、大抵その前の段階で、自分の方が虎の尾っぽを踏んで、原因を作っている。そのことに気づかずに、相手の反応だけにこだわり、トラブルに発展するという場合も少なくない。』
『社会性の長けた人にとっては、揉まれて成長する中で、言葉で語られたことだけでなく、言外の意味や意図を読み取り、相手の意向と調節しながら、自分の意思を表明したり願望を実現していく術を身につけている。しかし、アスペルガー症候群の人は、元々そうしたことが苦手な上に、もっと別のことに興味や関心を注いでしまうため、言外の意味や暗黙のルールを察知できず、語られた言葉だけに囚われてしまいやすい』
『勉強でも、五教科をまんべんなくやることを求めることは、このタイプの才能を伸ばすことには繋がらない。本人はその必要性に気付いて、苦手な科目も取り組むのは意味があるが、無理強いしたところで、益々嫌いになるだけである。それよりも、得意教科に磨きをかけた方が、将来に繋がる。誰にも負けない技術や専門分野を一つ身につけることこそ、このタイプの人を真の成功へと導く。』
アスペルガー症候群の子は、自立が遅いと思われがちであるが、必ずしもそうではなく、そうなっている場合は、親や周囲がそう仕向けた結果であることも多い。小さい頃からしっかり自分の主張や意思をもっていることも多く、それを尊重して育てるならば、ゲイツエジソンのように、独立心旺盛な人物に育っていく。』
『深刻な問題行動は本人が居場所のなさを感じているときに、起こりやすい。取り返しのつかない極端な行動は、例外なく、そうした状況で起きている。学校や職場にも、居場所がないと感じている上に、家庭にまで居場所がなくなった時、思いつめた激しい行動に走ってしまいやすい。』
『苦しい気持ちを伝えたい、親しくなりたい、甘えたい、仲間に加わりたいという場合、つっけんどんな態度をとったり、不機嫌な顔をしたり、相手を困らせたりすることよりも、もっと素直に表現する方が、ずっといい結果を生みやすい。しかし、そうした反応ができずに、あべこべに相手に嫌がられるような反応をしてしまうのは、素直に自分を表現したとき、逆に傷つけられたり、恥をかいたり、無視されたりした経験があるためだ。それで自分を素直に表現することに臆病になってしまっている。自分の弱いところや素直な気持ちを表現できたときには、特に褒めて評価を与えることが大事である。』