永遠の放浪者。自由。無鉄砲。そして狂いし者―。

愚者の道 中村うさぎ 読みました
『「自分は、己を捨てて、この男の才能のために奉仕しよう」という新たな野望を持ったのだ。それは、自分に才能
がないという厳しい現実に傷つかず、自分の存在意義を正当化しようとする、体のいい言い訳に過ぎない。愚者は己
ナルシシズムを守るために「自分の野望を犠牲にしても、男に奉仕するのが「いい女」である」という、きわめて男性原理的な幻想を利用したのだ。フェミニズムがどんなにこれを批判しても「男のための自己犠牲は女の美徳」という幻想が一向に消えないのは、男がしぶとく女を教化しているためではなく、女の側にこそ需要があるからだ。自分は何者にもなれない凡庸で無力な存在である、という厳しい自己認識に耐えられる者が、この世にどれだけいるだろうか。そんな苦い薬を飲むくらいなら、「私は彼に必要とされている、彼のために自分の夢を諦めて尽くすことには大きな価値がある。彼が何者かになってくれれば自分の手柄になる」という「代理者による自己実現」を目指したほうが、なんぼかラクではないか。』