賞賛と罵倒の軌跡

文壇アイドル論 斉藤美奈子 読みました 1700
『何か言いたい気分にさせる点で、あるいはパズルやゲームを解きたいという欲望を刺激する点で、村上文学は群を抜いていた。逆に言うと、謎解きの手腕を発揮したくてウズウズしていた若手批評家に、春樹は格好の材料を提供したのです。』
『サラダ現象は歌会始めのバブル版だった。そう考えると、いかにも昭和末期にふさわしい現象だったような気がします』
『彼女がなみなみならぬ影響を受けた少女マンガは厳しい世界です。売れなかったら、すぐにくび。それだけに、読者がどんなものを好むのか、漫画家は身に沁みてわかっている。そういうものを、吉本ばななも持っているんです』
『女に許された階層移動は、かつては結婚だけでした。であればこそ「玉の輿」ということばが生まれたのです。が、口では結婚願望を語りつつ、林真理子が体現したのは、なりふりかまわず自力で出世を目指す「男の成り上がり方」だった。彼女が白昼のもとにさらしたのは「女のホンネ」ではなく、むしろ「男のホンネ」だったのではないでしょうか』
『風俗や事件を性急に物語化する村上龍の手法はつまりテレビのワイドショー的なのです』
『「なんクリ」にはボケ(本編)とツッコミ(注)をそれぞれ担当する、二人の語り手が内包されているのです』