好きなことを職業にしつつさらにやりたいコトだけしかやらない人

貧乏するにも程がある 芸術とお金の「不幸」な関係 長山靖生 読みました
『「自分らしく生きる」ことが下流化につながる、つまり経済的な損失を伴うというのは、何も昨今にはじまった現象ではなく、昔から誰もが知っていたことだ。前近代には、武士は幕府や藩に属していないと俸禄がもらえず、浪人の暮らしは悲惨を極めた。農民は共同体のなかで人と歩調を合わせていなければ、村八分にされて、生活できなかった。「自分らしさ」は、横並びの集団事勿れ主義から見れば、危険分子の所業である。』
『文化は元々、王侯貴族のものだった。ピラミッドも古墳も支配者の墓であり、飛鳥・奈良時代の仏教寺院も、平安朝の物語や絵巻も、すべては殿上人のためのものだった。ヴェルサイユ宮殿紫禁城クレムリンも、そこに収められていた美術品ごと、全て諸王の所有物だった。われわれは「経済」による「文化」の排撃が、「文化」から排除されてきた庶民によっても望まれたのだという歴史を忘れないでおきたい。』
19世紀中葉フランスを中心に収入の道が無いのに芸術で生計を立てようとする人が現れた←ボヘミアン
夏目漱石が指摘していたように、世の大半の人々の趣味が低いのであれば、作家にとって売れることは屈辱ですらある。「金のために書く」のではなくて「自分でなければ書けないこと」を世に残したいという大望を抱いているのであれば、一生、絶対に儲からないという前提に立って、生活設計をしなければならない』
『映画やアニメーションでは、コンピュータが発達したためか、自主制作する映画作家が増えた。これに対して、作家は出版社からの原稿の注文が少ないからと言って自負出版の費用を借金して本を出すということはあまりしない』
『国は国民に借金して土地を買うように仕向ける、庶民も家を持てば気分はもう資産家で、なんとなく保守化する。庶民は猫の額ほどの土地を買い、家を建てるために借金するので、返済のために働き続けねばならず、労働力の安定供給が約束される。そのうえ国は、固定資産税が取れる』
夏目漱石は貧乏だといっているものの、よく知られているように高給取りで、そこそこ上層中流階級といえる生活をしていた。だから漱石が「貧乏」と言っているのは、「三井や岩崎に比べたら貧乏」というこのなのであり、その根底には「自分のような教養人は御用商人よりも階層が上」という封建的身分意識が残っていたのではないか』