完全個人主義を貫くための社会システムとは

他人と深く関わらずに生きるには 池田清彦 読みました
『大企業であればあるほど、潰れそうになった時に税金で助けてもらえる確率が高いのは、代議士や、政府の中枢の政治家や官僚の利害がからむからである』
『たとえば、現行の税法では政党に寄附をすると、税金が安くなるが、とんでもないことだと思う。もし、そういう制度を作るのであれば、いかなる団体や個人に寄附しても、税金が安くなる制度でなければならない。特定の団体に寄附をすれば、税金をまけてやろう、などと言ったことを決定する権利は、国家にはない。』
『そもそも学問は本来好きでやるのが当たり前なのだ。何千万円もの税金を使ってやろうとするのはずうずうしいのである。市場価値を持たない(すなわち企業も民間人も誰もお金を出さない)学問は、趣味なのだから、好きな人が身銭を切ってやればそれでよいのである。それでも好きな人は学問をせずにはいられないのだ(そういう人はなんと上品なのだろう)。』
『たとえば、40歳前の人には、今まで払った年金保険料を返してしまう。40歳以上の現在年金保険料を払っている人は、将来年金をもらうか、積み立てた年金保険料を払い戻してもらうか選択性にする。当然、年金の財源はほとんどなくなるから、今、支払っている年金は税金から補填せざるを得ない。しかし、30年もたてば、年金生活者はあらかた死ぬから、それが一番合理的だと思う。 そもそも、国民皆年金制度というのは、労働人口がどんどん増えていくことを前提にして作れらているので、若年労働者が減少するに決まっている。だから、国は少子化は困るといって子供の数を増やそうとしているわけである。しかし、ちょっと待ってくれと私は思う。不況はどんどん深刻になり、リストラという名の首切りが進行している。失業率は、働きたいけど職を探すのをあきらめた人を含めれば、現在実質的には15%ぐらいではないかと思う。大学を卒業しても、実質的には3割ぐらいは、まともな職に就けないのではないだろうか。そんな状態で若者の人口が2倍に増えたらどうなるか。職にあぶれた若者が巷にあふれることになる。』
少子化が進んで、しかも雇用状況が好転すれば、働き手の数が不足してくる(逆に、少子化が解消されて、雇用状況も好転しなければ、失業者が溢れてくる)。労働者一人あたりの労働時間を減らすことも大事だし、同時に働く意欲と能力のある老人を雇用することも大事であろう。働ける老人には働いてもらえば、年金を払う必要もない。まだ充分に働ける人を定年退職させて、年金生活者にするのは社会的にも賢いやり方とはいえない。70歳を過ぎてもバリバリの現役で働ける人もいるのだから、個人の違いを無視しての一律の定年制度は悪しき結果平等であろう。』
『日本で狂牛病が発生することはあり得ないと、時の熊沢英昭事務次官が大見得を切ったのが2001年の6月18日。そのわずか二ヵ月後に、狂牛病が発生したわけだから、農水省のいい加減さは超一級である。農水省は、国民の口に入る食物の安全性についてチェックして、情報を広く公開するのが役目のひとつだろう。情報を隠蔽したり、情報分析能力が皆無だったりすれば、何のための役所かわからない。あげくは、自らの失敗の尻拭いのために高い金をかけて狂牛病の検査をしたり、国産牛肉を買い上げるために補助金を出したりして、税金を無駄に使っている。』
『遺伝子を調べてシロだったら結婚して、クロだったら結婚しないのは、差別なのか否か。クロだと判って結婚しなかったあなたは、差別主義者として非難されるべきなのか否か。これは微妙な問題だ。個人の選択の自由は保証されなければならないからだ。』