小学校教員の体験から生まれた初めての小説

だいじょうぶ3組 乙武洋匡 読みました 1400
『「子どもたちにとっても名曲か、ということなんだ。さっきも言ったように、もうオレらは頭打ち。でも、子どもたちはちがうだろ。あいつらには、まだまだナンバーワンになれる可能性がある。それなのに「ナンバーワンにならなくてもいい」って。はじめから逃げることを教えてどうする、と思っちゃうわけだよ」』
『「結果的に一番になることが重要だとは思ってない。でも、一番になろうと努力することは大事なんじゃないかな。その努力が自分の能力を伸ばすだろうし、逆に努力しても報われない経験を通して、挫折することができる」』
『「いまの教育現場は、正反対なんだよな。子どもをいかに傷つけないようにするか。挫折を経験させないようにするか。まさしく「君は君のままでいいんだよ」とビニールハウスで囲いこんで温室栽培でもしてる感じ。こんなことしていたら、かえってあいつらが将来的に苦労すると思うんだけどなあ」』
『「子どもが傷つかないように、チャレンジさせてない」ってことなんだろうな。学校が、教師が』
『子どもたちにも、いつかは大人の目の届かないところで人間関係を築いていかなければならないときが訪れる。そのとき、からまった糸を解きほぐすようにして人間関係を調整してくれる担任教師という便利な存在はもういないそのことを考えれば、けっして転ぶことがないようにと、子どもたちが歩んでいく道からすべての凹凸を取り除いてしまう学校のあり方には、納得できなかった。嫉妬や、葛藤や、もどかしさ――そうした感情を経験させないまま子どもたちを社会に送りだすことのほうが無責任だと感じた』