いまや失われた政治家の本分がここにある

赫奕たる反骨吉田茂 工藤美代子 読みました 1900
『家が貧しくとも、体力と学問があれば陸軍大将を目指した。財産があっても体力がない者は、勉強して総理大臣を目指した。それがこの時代だった。』
『これだけ天皇が「御不例」であれば、なるほど摂政は必要に違いない、と国民一般を納得させやすかったであろう。「畏れ多きことながら摂政を置かるべきものと議決された」牧野の決然たる文言は、大正という時代が終わるのと入れ替わりに、宮廷政治の中核に牧野伸顕という支柱が打ち立てられたことを意味していた。』
『だが、吉田が仮に広田内閣で外相を勤めていたら悪くすればA級戦犯、軽くても公職追放は免れなかったであろう。そうであったら、戦後政治における吉田の登場はあり得なかった。』
『この時局がまことに心配であるが、万一日本が敗戦国になった時に、一体どうだろうか。かくの如き場合が到来した時には、総理も、自分と労苦を共にしてくれるだろうか』天皇にこうまで言われた近衛は、しばし絶句し目頭をぬぐった。』