官製不況

官製不況 なぜ「日本売り」が進むのか 門倉貴史 読みました
■認知ラグ
『なぜ、景気の底入れ時期だけは早とちりしやすいかといえば、景気が底入れしたことをいち早く国民に知らせることによって、消費者心理を好転させたいという隠れた意図があるからだ。また、景気底入れ宣言をすることで巨額の財政出動などを伴う経済対策を打つ必要性がないことを強調したいという思惑を働いている』
■政策ラグ
『予算の変更をするために国会での審議などが必要になり、政策の発動がもたつくことになる』
■効果ラグ
『金融緩和によって金利を引き下げても、その効果が浸透するまでには半年程度の時間がかかってしまう』
『景気が拡大と悪化の境目に差し掛かった時に、景気の現状認識が遅れたり、政策判断を誤ったりすると、取り返しがつかないことになる』
『だからといって、政策判断のミスを恐れるあまり、判断停止状態になって、何もしないというのはもっと最悪である』
『日本がM&Aの有望市場とみられていないので、海外の投資マネーも日本に流入せず、その結果、日本株の低迷が続くという悪循環になる』
『もし、ペナルティにより経済的損失が、不正をすることによって得られる経済的利益を下回るのであれば、不正は横行しつづけるだろう』
『最近では大手消費者金融の業績が厳しくなってきている。背景のひとつは、貸し倒れのリスクの少ない優良顧客であったはずの中高年層サラリーマンが、会社の倒産やリストラなどによって失業するケースが増えてきたことがある。これは、それまでのスコアリングシステムでは破産するはずがない利用者が破産するようになり、貸し倒れのリスクが高まったことを意味する』
『グローバリゼーションが進展して、経済が発展した国と、これから発展する国との間で貿易関係が強まると、途上国でつくられた安価な製品と先進国の製品が競合するようになる。すると、先進国の企業は、国際競争に勝つためにできるだけ従業員の賃金を抑制しようとするようになるから、非熟練労働者の賃金には下落圧力がかかる。一方で、高度な技術力・開発力を持った熟練労働者に対する需要が増えるため、彼らの賃金は上昇することになり、その結果、所得格差が拡大していくことになるのだ』
スウェーデン政府は、年金に対する若者の不信を払拭するために、「賦課方式」を維持しながらも、年金の負担と受益を一致させる仕組みを導入したのだ。「みなし積み立て方式」と呼ばれる制度である。これは、公的年金に加入している人が支払った保険料が毎年、それぞれの人の口座に積み立てられていると仮定してしまうと言うもの。そして、その仮想の積立金に一定の利回りをつけた金額が、老後に支払われることになる。』
『1973年、当時の田中角栄首相が「福祉元年」を掲げて、年金給付の大盤振る舞いをしたことが制度破綻の運命を決定づけた』
『なぜ日本経済が二流になりさがってしまったかといえば、本来、国民生活を豊かにさせるはずの政局運営や経済政策が他の先進諸国と比べてうまく機能していなかったからにほかならない。景気がまだそれほどよくなっていないにもかかわらず、金融引き締め政策や緊縮財政政策がとられて、せっかく回復しかけていた景気が腰折れしてしまうようなことさえあった。たとえば、00年8月11日に実施されたゼロ金融解除とその後の日本経済の失速は、まさに日本銀行によってつくられた「官製不況」といえる』