技術立国の危機

中国が世界標準を握る日 岸宣仁 読みました
『中国は10年余に及ぶ文革Great Cultural Revolutionの時期を経験したが、この間、多くの優秀な人材が農村などに下放させられ、十分な教育を受ける機会を奪われた。なかでも、文科系の出身者はイデオロギー闘争に巻き込まれる確率が高く、その分、政治的に生き残れないリスクを多く背負わされることになった。これに対し、理工系出身者はイデオロギーとは無縁な「技術」を相手にしているため、文革による傷も浅かったことは容易に想像出来る。しかも「科学技術は第一の生産力」と唱え、科学と教育を通じて国を振興させる「科教興国」を国家の基本に掲げた勝g小平の後ろ盾で、理工系の人材が共産党幹部に抜擢される傾向が強まるのは自然な流れでもあった。』
中国企業の人間なら誰でも知っているスローガンに「一流企業は標準で売る。二流企業はブランドで売る、三流企業は製品で売る」というものがあります。われわれ中国人はかなり以前から技術標準の重要性に気づいているのです』
日立製作所をはじめ多数のメーカーは、ベータ陣営への参加を希望していた。しかし、ソニーは技術力への過信からファミリーづくりを拒否した。ソニーのつれない返事に吉山博吉日立製作所社長(当時)は怒りのあまり、ソニー幹部に会ったその足で、日本ビクターに出向き、VHS陣営はの参加を申し込んだといわれる。日立、松下電器など大手メーカーを敵に回したベータの敗北は、すでにこのとき芽をふき始めていたのである。それに気付かないソニーは、ひとり猛然と突っ走って自滅した。』
『「日本では「他人と同じ」教育を行いますが、中国やアメリカでは「他人と違う」教育をするんです。そして、「他人と違う」ことがとても評価される。このことは非常に重要でしょう。標準化とは、ひと言で言えば「この指止まれ」の世界なんです。決して地道にやるものではなく、とりあえずやってみようという世界。信号を発する人間が勝つ世界なんです。こうした世界では、アメリカや中国のように、自己主張こそが評価される国の方が強いのは当然なんです」日本では今でも自己主張より調和が重視される。この教育のせいで、日本人は世界でもまれにみる「感度の鈍さ」を有してしまった。重要な情報でも、みんなが知らないならそれでよりと考えているのかどうか、独自のアンテナを張っている人間がきわめて少ないのだ』