人権保障の視点から

伊藤真刑事訴訟法入門 伊藤真 読みました

『捜査官は、違法な手段で集めたその証拠を、法廷では証拠にできないわけですから、結局その被疑者・被告人は無罪になってしまうわけです。実際に、下級審レベルでは、そういう形で覚せい剤事件で無罪になった事例があります。覚せい剤を所持していたことは明らかなのですが、捜査官の証拠の集め方が違法であったからといって、無罪判決が出た事例というのはけっこうたくさんあります』

『普通、素人考えでも捜査段階で自白しておいて、法廷に行ってから、「いやあれはうそです。本当は私はやってません」と供述を覆しても、やはり自白したのだから、やったのではないかと考えるものです。しかし、実際にその事件の被疑者の話を聞くと、本当にその取調べがきつくて、とにかくもうすぐにでもラクになりたいという気持ちで言われるがままに供述してしまうそうです。裁判官が神様みたいに思っていますから、きっと裁判官は本当に公正な裁判をしてくれるんだろう、裁判官の前できちんと真実を言えば、わかってくれるはずだという甘い期待で、捜査段階では言われるままにしゃべったりするのです』

『被疑者なり証人なりが、しゃべったことだそのまま記録されて法廷にいくと思ってしまいがちですが、そのようなものは一通もありません。被疑者がしゃべったことを捜査官が全部書き直します』

『実際やってない被疑者でも「右のとおり間違いありません」というところに署名、押印すればそれでおしまい。立派にちゃんとした自白をしたことになってしまうわけです』