給料半減でも豊かに生きるために

年収300万円時代を生き抜く経済学 森永卓郎 読みました
『日本で本格的なデフレが起こったのは、すでに70年前になる。その時の記憶を持っている国民はほとんどいない。だから、デフレはインフレよりもはるかに怖いのだということを、きちんと経済史を勉強した人以外は、なかなか理解出来ないのだ。その一般庶民の弱みに付け込んで、ハイパーインフレの伝統を流布したエコノミストたちは、例外なく金持ちの味方で、しかも自身も勝ち組だったのである。
『本当の悪者であるバブル期の経営者は、当時一億円以上の年棒を手にし、数億円の退職金を受け取って、いまは左うちわで高みの見物を決め込んでいる。逮捕するのだったら絶対彼らの方だ。ところが、彼らを逮捕するのは法律的な根拠も含めて非常に難しい。だから無理して手間をかけるより、とりあえず今の頭取を逮捕してしまった方が、国民のエールを受けやすい。』
アメリカというのは、所得と社会的地位が比例する社会だ。だからお金を稼ぐことに成功すれば誰でも社会的地位を得ることが出来る。イギリスはもともとそうではなかったが、サッチャー首相が進めた金融ビッグバンや規制緩和によって、急速に経済・社会がアメリカ型になって行った。金融市場で大金をつかんで大成功する一般市民がどんどん生まれたのがそのきっかけだった。成功を目指してみんなが必死に働く社会に変わったのである。一方大陸ヨーロッパというのは厳然とした階級分断が残る社会だ。一般市民はどんなに努力しても貴族にはなれないから、最初から階級を駆け上がる成功をあきらめている。ヨーロッパの普通の市民にとって、人生の目的とは「いかに楽しく人生を過ごすか」ということなのである。だから、年次有給休暇は全部消化するし、残業もしない。そして定年年齢を早めて、一日でも早くリタイアしようと考えている。ヨーロッパの庶民の価値観は、ある意味で、江戸時代の日本に近いのかもしれない。江戸時代の庶民は、身分制度のせいで武士階級になることなど考えられなかった。しかし、庶民が不幸だったかと言えばそんなことはない。貧しい暮らしのなかでも、お祭りには大騒ぎし、歌い、踊り、そして生涯恋をして生きていた。誰も、将来不安に怯えて、ひたすら萎縮するようなことはなかったのである。』
『家が貧しくても能力があって努力を惜しまない若者を救う日本的な仕組みがどんどん失われてきたのである。』
『講演会をやるときにギャラが100万円以下の講演者を依頼することは難しいということだった。100万円のタレントを呼べば、ホールが満席になって採算が合うが、それ以下のギャラのタレントだと空席ばかりになって、かえって赤字になってしまうのだそうだ。報酬の単価で差が生まれるだけでなく、仕事の量でも差が生まれる。だから、知的創造社会化は、半端ではない所得格差を生み出すのである。ちなみに、その所得格差が才能だとか努力によって生み出されるのかと言えば、私は必ずしもそうではないと思っている。知的創造分野では、才能があっても、努力してもまったく報われない人はたくさんいる。むしろその方が圧倒的に多い。それでは、所得格差を規定する要因は何なのかといえば、私は「運」だと思う。』
『土地の価格が今後も値下がりを続けると、その地域はいずれスラム化していくだろう。例えば住宅ローンを払いきれなくなって手放すと、その家は安い価格で叩き売られる。価格が安くなると、今度は「低所得層」がその家を買うから、次第にその地域の資産価値が落ちていく。それを嫌って、ますます人が出ていく。そうなると、次第に買い手もつかなくなる。マンションで言うと。空室率が30%を超えると急速にスラム化が進むのだそうだ。日本には戦後アメリカのようなスラムは存在しなかった。それが今後、高級住宅地とスラムに分かれていく。』
『これからは知的創造型の社会になる。みなが同じものやサービスを欲しがることはあり得ない。だから、これをやっておけば、絶対安心などというトレンドは存在しないのである。』
『確実に就職が可能だと保証できる資格などない。資格でメシが食えるのは医者と弁護士くらいのものである』
『経営者が本当にやろうとしていることは、エリートに手厚くして、その代わり、エリートではない一般社員の待遇をどんどん引き下げていこうということなのである。』
『本当に有能な人はアメリカ本土やヨーロッパにいて、日本に来る経営者は二流、三流というのは、外資系企業の常識になっている。彼ら日本に来る経営者は中長期的な戦略も持たず、アメリカ本社の顔色を見ながら短期の数字をあげることだけに腐心している人も多い。いまの日本は不況で地価や株価は下落している。日本企業や日本の不動産は買い得だからと外資がどんどん「日本買い」を進めているが、今後景気が回復したらたぶんさっさと売り逃げるだろう。そして売却益を稼ぐのだ。外資系企業の撤退が加速すれば、外資で働いている社員の多くは居場所がなくなってしまう。転職の機会も少なくなっていくから、その結果、今外資系のエリートともてはやされている人たちは低賃金層に落ちてゆくか、あるいは能力や金銭的余裕があるなら自分で事業を始めるか、どちらかを選ばざるを得なくなるだろう』
『あまりに高い専門性を確立してしまうと、その職種の需要が飽和してしまったり、新しい技術に置き換えられてしまったときに、就職先を失ってしまうのだ』
『必要なのは「ドリーム(夢)」ではなく「タスク(課題)」だ。思いついたらすぐやる。駄目だったら、すぐに別のものに切り替える。』